森山邸/神奈川工科大学kait工房
東京の友人から敷地を見てほしいとの連絡があったこともあり、東京へ。
ちょうど西沢立衛設計の森山邸でマリオ・ガルシア・トレスの展覧会が行われていたので行ってきた。
敷地に部屋がばらまかれたような平面図からは、プライバシーの無い、かなり住むのに勇気の要りそうな雰囲気が感じられるのだが、実際は敷地周辺の下町からして、声を潜めなければ歩けないようなプライベートな雰囲気が漂っているので、その気配が濃縮されたような森山邸はおいそれと立ち入れない濃密で強固な私空間だった。
メディアにもさんざん露出しており、飽きるほど見ていた建築だが写真では判らないものだ。
個人的にはエアコンや照明器具を可能な限り隠蔽しているのが意外だった。
アルミサッシなどと同じくアノニマスな存在として受け入れられているのかと思ったが、他者によってデザインされたものは注意深く排除されている。
展示のあった縁側のような離れへは、1m程の高さの窓に腰掛けて入る。その身体の使い方が懐かしくも不思議な感じ。
翌日は石上純也設計の神奈川工科大学kait工房へ。まさに木立の中を歩くような体験。多目的工房としても実際に運用が開始されておりなかなか良い雰囲気で使われている。いろいろな方向を向き水平力を負担した、フラットバー状の柱と縞状にとられたトップライト。それだけに予算と労力を傾けた設計で、思ったより自然な雰囲気。真っ白で極細の柱は移動する際にぶつかりそうになるのではないかと考えていたが、意外と平気。
空間読解能力が刺激され、木立の中の小道や窪みが感じ取られような気さえする。
ただし温熱環境は最悪。床置きのエアコンが何台も稼働しているのだが既にかなり暑く、開口部は出入り口の4カ所のみ。せめてもう少し開口部があれば…と考えてしまった。植物にも過酷な環境だろう。石上氏の設計には植物が不可欠な感じで入り込んでいるが、その扱いにはいつも疑問を覚えてしまう。やっぱり空気は動いてないとなぁ。FIXガラス多用はんた~い。
ただ柱の立ち方のみに労力を傾注し、その結果得られた空間の質は革命的に素晴らしい。あ、大学の設備だから真夏と真冬は休暇で使用しないってことにすればいいんじゃないか。きっとそうだ。