ある日のこと、ある夫婦がふたりの娘さんをつれて僕のところにやってきました。 もう一人こどもがふえるので家を建てたいというお話です。
リビングと、
寝室と、
こども部屋と、
こどもと一緒に入れる大きめのお風呂、
そして旦那さんは音楽家でもあるので音楽室がほしいとのことでした。
敷地は豊かな自然の中につくられた、まあたらしい住宅地です。まあたらしい住宅地にさまざまな、まあたらしい装飾をまとった大きな家々が建っています。
「ぼくはあんなぴかぴかの大きな家はすこし気恥ずかしいな」と旦那さんは言いました。
この家の敷地は道路から手前に車庫用のスペースのみが残されて奥は2メートルほども高くなっていましたので、ここに2階建ての家を建てるとりっぱ過ぎて、確かに少し気恥ずかしい気がするなとぼくも思いました。
そのうえ大きなボリュームで家をつくろうとすると、どうしてもりっぱ過ぎたり、ざんねんな場所が出来たりしてうまくいきません。とくに敷地の幅一杯に家を建てると、今はまだ建っていないまわりの家々の影に入ってしまいそうでした。
そこでひとまず、それぞれの部屋をひとつの小屋のようにつくって敷地のなかでぴったりだと思える場所に置いてみることにしました。
リビングやキッチンはひとつにまとめて庭とひとつながりで使えるように床までの大きなガラス窓がつけられて、置かれました。
こども部屋はいちばん日当たりの良い場所にキッチンからいつでも見えるように、置かれました。
音楽室は音が漏れるといけないので道路沿いに少しだけ地面に埋められて、置かれました。 寝室は落ち着いた北側に、置かれました。お風呂や洗面所はまとめて家の中心に置かれて、光をふんだんに取り入れられるように屋根を突き抜けてのっぽになりました。
さいごに物置の小屋だけが敷地の南東側にとり残されました。それはちょうどお隣からの目隠しにぴったりで、おまけにどういうわけか、どの家も同じように物置を外に置いているので、敷地のはしにある物置の小屋は誰の持ち物かよく分からないような感じになりました。誰の持ち物かわからないということは、どこまでが自分の場所かよくわからないということですから、このまあたらしい住宅地ぜんたいが自分の場所みたいに思えるかなとぼくは思いました。
そうして結局この家は計7つの小屋がよりあつまって、その中で遊んだり、その隙間ですごしたりして暮らすようなつくりになりました。
それぞれの小屋は舞台装置の書割のようなつくりや少し黄色みがかったアクの浮き出た塗装や、普通よりは高めに塗りわけられた壁によって夢の中のように、部屋がじっさいよりは大きく見えたり小さく見えたり、 自分が大きくなったり小さくなったりするような、すこしだけ可笑しな部分を持っています。
大きな庭にはデッキが掛けられていくつか大きな穴が開けられ、野原にあるような草花が植えられ、 隣家との境には木が植えられて、野原の上にデッキが浮かんでいるような場所になり、 道路側の斜面は緑で覆われて、このまあたらしい住宅地に野原の匂いを届けてくれることでしょう。
Design
Tato Architects
Team / Yo Shimada
Construction
Sasahara Kensetsu
The request for this project came from a family with children, that needed a new house with more space. The site, located close to rich nature in a very new residential area, features a wide variety of large newly build homes. The family requested a large number of rooms, among which was a music room as the farther is a musician.
The front of the site connects to the road level, but quickly rises about two meters, a little further in. Due to the scale of the house, two storeys were needed. To prevent the final volume of the design from feeling too big and heavy, the second floor were designed with the image of smaller volumes, relating to each other like huts or cabins, in mind.
The music room was placed on the ground floor where the sound wouldn’t leak and disturb the residents or neighbours. On the upper floor, the remaining functions were placed in relation to each other and the surroundings.
Fitted with large windows the living room connects to the kitchen and garden. The children’s room is placed in a sunny spot visible from the kitchen. To the north lies the bedroom and the bathroom is in the centre, a little taller than the rest, penetrating the roof allowing lots of light to enter.
In total this house consist of seven huts gathered together to form a living space, you live both in and between. The huts varies in size and materiality creating a variegated expression, which help scale down the building.
In the deck connecting the upper floor, openings are cut where greenery, trees and flowers can grow. The slope that rises from the garage area to the upper floor is also covered in green creating a beautiful field.
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タト