開放、閉鎖双方の性格をもつ半外部空間を作り出す際、最も簡便な手法のひとつが木製ルーバーを使用することであるが、その空間の開放/閉鎖性を決定するにはルーバーの「幅」と「間隔」の2つのパラメータにより、ルーバーの「密度」を操作するのが普通である。
しかしこの建物では開放的な空間から閉鎖的な空間へとゆるやかに繋げたかった為、ルーバーの「角度」を操作することにした。具体的には1本1本のルーバーの羽根を取付け角度を徐々に変えて、ひねりながら取付けることにより、板張りの壁面がゆるやかに開いてルーバー状に変化する外装を作り出している。
施工方法としては木製ルーバーを取り付ける部材をそれぞれ角度をつけて切欠き、それにルーバー材をステンレスビスでもみこんでいくだけである。この事例では1mにつき10度づつルーバーが開いていき、垂直面(0°)から60°までルーバー材がゆるやかにひねられている。
ルーバー材には適度な粘り気と堅さが必要な為、ここではカラマツを使用し、全体で6mのルーバー壁面になる為、真中で継いでいる。またルーバーを取り付ける切欠きされた付柱には耐候性、加工性の高いヒバ材を使用した。
付柱の加工は工場で行い、これが若干手間ではあるものの取り付け自体は簡単で、単純な操作で今まで見たことのない美しい外装が得られた。この事例では通路に使用したのだが、導入部では光も風も抜ける透過性の高い空間が、奥に進むにつれて徐々に閉じていく、グラデーションの深い空間となった。
この事例では木製ルーバーの面材としての特性を生かしたわけだが、線材としての特性を生かして、取り付ける壁面の角度を両端で変えることにより、単純な操作で三次曲面を形成することなども試みている。
簡単な操作で様々な表情を作り出せる木製ルーバーは、注意深く扱えば、まだまだ可能性のある手法ではないだろうか。2002
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タト