Tato Architects / Yo Shimada

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中山さんのオープンハウス


中山英之さんにお招きいただき、新作住宅を京都で拝見してきました。
神社の脇に建つのだけれど、牧師館のようにも見える、まったく新しいような懐かしいような、時代を感じさせない住宅。前作よりも名伏し難い謎めいた空間に、あれはいったい何だったのだろうかと考え続けています。
建物に入った瞬間は事前に見ていたスケッチの印象に引っ張られたせいか、中央のボリュームがあと1.3倍ほど大きい方が良いのではないかと思いながら見はじめたのですが、奥行きを消失させる南側のR壁と、北側のガラス壁、扉を開けるたび、階段を上り下りするたびに境界をひょいと飛び越えるような感覚に、空間の大きさがすっかり判らなくなってしまいました。
階段を上下しているうちに境界を飛び越える感覚は、大好きな住宅の一つである中村好文さんの上総の家を思い出させたりするな、などと思いながら過ごしているとあっという間に夕方です。
表裏で微妙に明度を変えた扉の薄いグレーやホーロー製のようにポテッとした表情の家具は流石で、真似できそうにありません。前作では少しキリキリとチューンされ過ぎな感じが若干気になったのですが、そういう部分はなくなって大らかな感じがしました。
ただ、巨大なガラス面はやはり住宅というよりは、商業施設や公共施設のようにも見えてしまうので、作っておられたカーテンが掛かったところを見てみたいと思いつつ、帰路につきました。
あのささやかな場所で、これから家族4人がどう暮らされていくのか、とても興味があります。

2009. 10. 22建築探訪

奥沢の家/国立の家

確認申請書に判子を一つもらう為に上京。
宅急便でやり取りできれば良いのだけれど、行政機関はそういうわけにはいかないらしい。
その為だけに上京では悔しいので現地で配置とレベルの確認もしてしまい、長坂常さんの「奥沢の家」のオープンハウスにお邪魔。
写真で見るよりもギャラリーでのインスタレーションのような雰囲気で、アーティストの友人がセルフリノベーションした家を思い出す。
写真で撮ると蛍光灯と白熱灯の色温度の違いが強調されて構成的な印象を受けるが、実際はもう少しざっくりとした状態で、細部の判断の積み重ねによるブリコラージュ的な空間。
少し塗装(というかエポキシ)に頼りすぎではと気になった。

その後ストレートデザインの国立の自邸のオープンハウスにもお邪魔。
開口部は全てかなりメンバーの細い鋼材を使ったほとんど家具的な作りで、薄いシングルガラスが嵌められており、どんどん開口部が重装備化する最近では、類を見ない透明感で、温熱環境面ではOMソーラーの亜種によるサポートがあるようだ。
半地下 地上2階のコンパクトな住宅で、こういった形式の住宅を実際に見るのは初めてなのでその有効性を再確認。
あれだけ基礎を掘ってもかなりローコストに抑えられることも確認できたので今後使うかも。

2009. 6. 23建築探訪

塩屋の住宅

上町研究所の定方さんが塩屋で新築している住宅を案内してもらった。
よく練られた手腕による確かな美しい空間。こういった素直に美しい空間には心が洗われるような気持ちになります。建築家としてこういった方向もあり得ただろうと、ふと思いました。

2009. 6. 16建築探訪

記事掲載のお知らせ

新しい住まいの設計 7月号 P192/193で、神戸の建築をいくつか紹介させていただいています。といっても写真を送って電話インタビューに答えただけですが、丁寧にまとめられていて有り難いことです。

2009. 6. 1Publication, 建築探訪

荒谷さんのオープンハウス

荒谷省午さんの設計された住宅のオープンハウスに行ってきた。これまで見せていただいた氏の住宅は、割と大きなものが多かったのだが、これはコンパクトで締まった、とても良い住宅だった。
自邸などでも取り入れられていた斜めの要素がより大胆に使われ、三層を貫く壁となって空間にさまざまな濃淡をもたらしていたのが印象的だった。無有建築工房のOBである氏はもっとスタティックな設計をしていくのだろうと勝手に考えていたのだが、最近はそんな思惑は毎回裏切られ、どんどん自由になってきているようだ。
二階はMenilCollectionMusiumのようにルーバー状の反射板を介して拡散光の拡がる落ち着いた空間だった。
水回りの空間に壁の裏側的な感じを持ち残念に思ったのは、大抵最も良い場所に水回りを計画してしまう僕の性分が為せる技でしょうか。
もう少し長居したかったのだが、はずせない用事があり、そそくさと退席してしまった。次作も是非見てみたい。

2009. 5. 29建築探訪

豊雲記念館 ヨドコウ迎賓館 ストロングビルディング

(昨日の続き)次に向かったのは清家清の「豊雲記念館」

小原流三世家元である小原豊雲の資料と、彼の収集物であるアジアや南米の民族資料が収められた記念館で、春と秋のそれぞれ約20日間のみ一般公開されている。
今回は特別に見せて頂いたのだが、内部は南米的な濃い暗さに支配されている。
外はまだ肌寒い初春の日差しの筈だが、うねる曲線状の庇や、陶器製多孔ブロック越しの光線は南米やアジアを彷彿とさせ、収蔵品と良くマッチしておる。
ただ、多孔ブロックでも光線は遮りきれず、展示品が傷むので普段はロールスクリーンが下がっており、一部を空けたりして対処しておるもよう。
その後旧山邑邸 (ヨドコウ迎賓館)へ。こちらは内部撮影不可。

やはりなんといってもスケールの操作が卓越、真似できませんな。しませんけども。増築を重ねた日本旅館のように奥へ奥へと誘われ、ひとつひとつが小さなドアのように見える通風用の窓など内部も独特の感覚に貫かれていて、一つの世界を形作っている。

最後に神戸市役所裏の立体駐車場 ストロングビルディングに。竹中工務店の設計だが、街中でよくある平凡な立体駐車場とほぼ同じ予算で、つきつめて設計した結果、美しい建築になっている。
ありえないくらいに細い柱と、梁のないフラットなスラブで構成され、実に爽やか。個人的には少し格好良すぎるので、も少し崩したい気がするよ。いや、後で付けられた看板とかは残念な感じなんだが。

2009. 3. 26建築探訪

鉄の教会~神戸新生バプテスト教会~ 再訪

ある雑誌の企画で神戸の名建築をいくつか写真とともに紹介して欲しいとのことで朝からいくつか廻ってきた。見学可能な物件と言うお題なので住宅は除外。以下にメモ代わりに記載。
まずは木村博昭師の「鉄の教会~神戸新生バプテスト教会~」へ。
コンクリート打ち放しの地下一階の上に9mmの鉄板を折り曲げただけの簡素な小屋が懸かり、ガラスブロックで内外を仕切っただけのシンプルなつくりは厳しい建設コストから導き出されたものであるらしい。
教会堂内に照明すらなく、自然光と蝋燭の明かりのみで照らされる教会堂内は、プロテスタント的な質素さの中に木村師ならではの装飾感覚が見え隠れして色気がある。
木村師の装飾感覚は正面の十字形を成す鉄骨の僅かなふくらみや、タイバーの連なり、手摺のつくり等に現れており、モダニズム初期の建築が持っていた装飾感覚を思い出させる。
竣工当時の黒皮鉄板が持っていた艶は吹き込む風雨によって失われ、うっすらと錆が浮いてきているが、それもまたなかなか。
竣工当時から夏は暑くて大変なのではと思っていたが、自然通風のある半外部的な空間になっているので暑くはない、むしろ大変なのは冬の寒さだとのことだった。
この後、坂茂「紙の教会」 安藤忠雄「風の教会」と続けるのもまた一興かと思ったのだが「紙の教会」は仮設だった為、建て替えられ、「風の教会」は運営会社が倒産した関係で見学できないとのこと。

2009. 3. 25建築探訪

発明的な外部となげやりな内部

ある建築家のオープンハウスに
コンセプトは優れており、外部空間は発明的で気持ちよさそうなのだが、その気持ちよさそうな外部空間と断絶してしまっている内部空間の質には疑問が。構造に傾注しすぎた予算の配分に問題があるのか、内部空間はハウスメーカー風といってもよさそうな塗装風クロスにソフト幅木と既製品の内部建具。
ある程度割り切って仕上げているのは想像に難くないのだが、であるにしても、もう少し愛情のある扱い方ができなかったのだろうか。
やや唐突だがこんなのを思い出した。
APHEX TWINの名曲の萌えアニメソング風REMIX。アニメソングのテクノ風REMIXはよく見掛けるのだが、逆をやる発想はなかった。
例として適当なのかどうかは、わからなくなってきたが、ハウスメーカー風の意匠であっても愛情を持って扱えば何らかの面白さは獲得できそうな気がするのに、惜しいなぁ。

2009. 2. 19建築探訪

出雲大社本殿特別拝観

プライベートなことで少しバタバタしており更新が滞っているので近況報告。
盆は1日だけ休みをもらい、出雲大社本殿の遷宮に伴う特別拝観に行ってきた。
大掛かりな修繕をする為に大國主大神が仮殿にお遷りになられた為、普段は近づくことさえ許されない本殿に上がらせてもらえるとのことで、友人の建築家夫妻の車に乗せてもらい出雲まで。
前回の修繕に伴う一般公開は氏子限定だったそうで、初の一般公開とも言えます。
通常拝観可能な八足門を超えた瞬間に景色は一旦、銀灰色に色褪せた垣によって遮られ、地面は粗い玉石に覆われてモノトーンの世界に変容します。幽界。生者の居て良い世界ではないなと感じました。そこからさらに楼門をくぐり、大屋根の掛けられた階段を上がるあいだ、外界は殆ど見ることが出来ません。そして階段を上がって濡縁から初めて見ることの出来る、八雲山。禁足地であることもあり太古の景色を想わせる美しさで、係の人に注意されるまで立ち尽くしてしまいました。
本殿内部自体にはそれほど感心しなかったのですが、まったく傷んでおらず、あれが250年前に作られた空間だとはにわかには信じがたいものがありました。本殿内部の御神座は社殿入口とは向きを変えてあり、注意深く仕舞い込まれている。注意深く荒ぶらぬよう鎮められているように感じたのは穿ちすぎでしょうか。
本殿は30分ずつグループに分かれての参拝で、僕らの前の組には女優の天海祐希さんがいらしており、八足門前ですれ違ったのですが、同じグループであったら集中できなかっただろうなと思い、胸をなで下ろすような残念なような。。

2008. 8. 18建築探訪

森山邸/神奈川工科大学kait工房


東京の友人から敷地を見てほしいとの連絡があったこともあり、東京へ。
ちょうど西沢立衛設計の森山邸でマリオ・ガルシア・トレスの展覧会が行われていたので行ってきた。
敷地に部屋がばらまかれたような平面図からは、プライバシーの無い、かなり住むのに勇気の要りそうな雰囲気が感じられるのだが、実際は敷地周辺の下町からして、声を潜めなければ歩けないようなプライベートな雰囲気が漂っているので、その気配が濃縮されたような森山邸はおいそれと立ち入れない濃密で強固な私空間だった。
メディアにもさんざん露出しており、飽きるほど見ていた建築だが写真では判らないものだ。
個人的にはエアコンや照明器具を可能な限り隠蔽しているのが意外だった。
アルミサッシなどと同じくアノニマスな存在として受け入れられているのかと思ったが、他者によってデザインされたものは注意深く排除されている。
展示のあった縁側のような離れへは、1m程の高さの窓に腰掛けて入る。その身体の使い方が懐かしくも不思議な感じ。

翌日は石上純也設計の神奈川工科大学kait工房へ。まさに木立の中を歩くような体験。多目的工房としても実際に運用が開始されておりなかなか良い雰囲気で使われている。いろいろな方向を向き水平力を負担した、フラットバー状の柱と縞状にとられたトップライト。それだけに予算と労力を傾けた設計で、思ったより自然な雰囲気。真っ白で極細の柱は移動する際にぶつかりそうになるのではないかと考えていたが、意外と平気。
空間読解能力が刺激され、木立の中の小道や窪みが感じ取られような気さえする。
ただし温熱環境は最悪。床置きのエアコンが何台も稼働しているのだが既にかなり暑く、開口部は出入り口の4カ所のみ。せめてもう少し開口部があれば…と考えてしまった。植物にも過酷な環境だろう。石上氏の設計には植物が不可欠な感じで入り込んでいるが、その扱いにはいつも疑問を覚えてしまう。やっぱり空気は動いてないとなぁ。FIXガラス多用はんた~い。
ただ柱の立ち方のみに労力を傾注し、その結果得られた空間の質は革命的に素晴らしい。あ、大学の設備だから真夏と真冬は休暇で使用しないってことにすればいいんじゃないか。きっとそうだ。

2008. 5. 9建築探訪

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